コスモスの花の古寺”として有名な般若寺の北門の向かい側に、創業明治16年という奈良で一番古い歴史を持つ植村牧場がある。乳牛35頭の小さなこの牧場で、知的ハンディのある青年たちが、4代目牧場主・黒瀬礼子さんを“ねえちゃん”と慕いながら、手作業で昔ながらの牛乳づくりを大切にしている。
牧場の朝は早い。奈良市内を中心に約1000軒の家庭に瓶詰の牛乳を数人で配達する。各家庭の出勤、通学前に配り終えるため、最も早いマコト君は真夜中の午前0時前に礼子さんと牧場を出発する。牛乳は低温殺菌(75度、15分)。ほんのり温めた程度の殺菌がポイントである。
近所の農家から形が悪く商品にならない新鮮な野菜を譲り受けて、牛に与える。牛乳から大根やキャベツの香りがすることもある。「今日の牛乳は青臭かった」と、毎日飲んでいるお客さんから声をかけられることも。
牛乳の品質に加えて、植村牧場のもう一つの特徴は、養護学校を卒業した青年と協働していること。黒瀬さんは「20年前に、牧場の仕事で手が足らなくなって、誰かいい人がいないかと思って職業安定所に行ったことが雇用のきっかけで、現在は13人が働いている。乳搾りが得意な人、水やりの得意な人、牛糞を取るのが得意な人、それぞれに個性がある。すべて手作業だから、個性の数だけ活躍できる作業がある」と言う。
知的障害児(者)と共に働くことに、「やさしさや気遣いなど、人間らしく生きることの大切さに気づかされることが多かった。しんどいことも多かったけど、一緒にやってきてよかった。最近になって、彼らの老後のことを心配している」と、黒瀬さんは言っている。
(参考資料)
さて、低温殺菌のおいしい牛乳で有名なこの牧場の日常が「小さな町の牧童たち」(アズマックス製作)という記録映画になった。製作された当時は、黒瀬礼子さんと両親、祖父、3人の牛乳配達人、それに住み込みで5人の知的障害のある青年たちが働いていた。青年たちはみな、養護学校の卒業生であり、この映画は黒瀬礼子さんと彼らの日常生活を記録し、紹介した作品である。
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植村牧場 |
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牧場主 黒瀬さん |
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搾乳している牛舎の様子 |
2 件のコメント:
奈良県出身ですが、知りませんでした。
般若寺のコスモスはすばらしいですね。
mukai22さんコメント&いいね!
ありがとうございます♪
植村牧場にはレストランもあり、そこでランチをいただきました!デザートのアイスクリームの美味しかったこと新鮮な牛乳を使用しているからでしょうね。
まさに手作りの牧場経営だから出来ることだと思いました。アップルパイが有名なのですが4個しかなくて残念でした。この後唐招提寺も観光ボランティアの案内で参拝しました。「けいか」のお線香をお土産に買ってきました。香りが好きです!
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